『赤い靴』 それは死の靴? 夢の靴?!
「赤い靴」これはバレエ映画の傑作だ。踊りと恋を融合した不滅の恋愛映画とも言えるだろう。1948年製作と古いが一見の価値はある。
本作品は残酷かつ華麗な芸術の世界を描いたバレエ映画の最高峰である。
芸術 至上主義のバレエ団の団長ボリス・レルモントフ(アントン・ウォルブルック) が、一人のバレリーナを発掘するところから物語りは始まる。彼女をプリマドンナに育て上げ、アンデルセン童話を題材にした新作バレエ 『赤い靴』のプリマに抜擢する。
これまでのプリマが「みんな聞いて聞いて、私、結婚するの!!」と練習場で 嬉しそうに叫ぶのを祝福してやるどころか、「恋だ結婚だと騒ぐプリマなど誰が見にくるものか。彼女はもう終わりだ。踊りを選んだ者に他の人生はない」と 団長は呟く。なんとも冷たい心の持ち主だ。
ヒロインのヴィクトリア・ペイジを演じたモイラ・シアラーは、当時「眠れる 森の美女」のプリマとしてロンドンのロイヤル・オペラハウスの舞台に立っていたが、本作品の主役に選ばれたことで世界的に有名になった。
彼女の恋人役になる作曲家ジュリアン・クラスター(マリウス・ゴーリング)は、教授が自分の曲を盗作していると文句をつけに行くが、団長のボリスから「盗作された方より盗作した者の方が、もっと傷ついているんだ。」と言われ、それが 縁でバレエ団の作曲家として雇われ、オペラ「赤い靴」の作曲を命じられる。
ボリスはヴィクトリアに云う。
「その赤い靴を履いた者は 名バレリーナになる代わりに死ぬまで踊り続けねばならない宿命を背負う。 靴のおかげで 彼女は舞台から通りに出、山を越え谷を越え 野原や森を通り抜け・・・時や愛があっという間に過ぎる。人生が過ぎる。だが赤い靴は踊り続けるんだ」
現実の舞台シーンと架空の映像とを合成したこの踊りのシーンは本作品の白眉となった。特に新聞紙とヴィクトリアが踊るシーンは今では何でもない場面だろうが、 撮影当時は相当苦労したであろう。
撮影は名手ジャック・カーディフ。テクニカラーで写し出された画面は実に美しく見事という他ない。 恋仲になった二人が愛を語る唯一の場面、湖畔で有蓋馬車をゆっくり走らせながら 後部座席で抱き合ってジュリアンがヴィクトリアに囁く。
「僕の晩年に美しい娘に聞かれたい。『あなたの一生で最も幸せだった時はいつ?』と。それは湖畔でヴィクトリアと過ごした時、と答えるだろう。」
そして静かにくちづけを交わす。
二人の仲を知ったボリスは激怒、ジュリアンを解雇する。だがボリスの意に反し、ヴィクトリアもジュリアンを追って退団、二人は結婚する。しかし、バレエを捨てきれない彼女はボリスの誘いに応じて、再び『赤い靴』の舞台に戻る。
その公演の幕が上がる日、突如ジュリアンが現れる。彼は大事な自分の舞台の初日の指揮を休んでまで彼女を引き戻しに来たのだ。
舞台に立つのを止めようとする夫と、芸術に恋など不要だというボリスの激しい言い争いにヴィクトリアは動揺、「やめて!」と叫ぶ。「お別れだ」と去って行く ジュリアン。
舞台に出ようと進みかけた彼女は突然身を翻し、衣装姿のまま表に駆け出して露台からジュリアンが乗ろうとした列車に身を投じる。
YouTube 列車に身を投じるシーン
異変に気付いたジュリアンはヴィクトリアの許に駆けつける。彼女は苦しい息の下で云う。「赤い靴を・・・脱がせて・・・」
ヴィクトリアの死を知ったボリスは、彼女が二度と舞台に立つことは出来なくなったと観客に告げる。そして、プリマ不在のまま「赤い靴」だけの舞台を上演するのだった。 この作品はバレエを志す人には是非みてほしい。レッスン風景、舞台稽古なども面白く為になる。他のバレエ映画の追随を許さない一大傑作として映画史に残る名画であろう。
1948 イギリス・カラー 監督 マイケル・パウエルとエメリック・ プレスバーガー 出演 モイラ・シアラー アントン・ウオルブルック
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圧倒的な物量で再現した「史上最大の作戦」
第二次大戦史上最大の激戦地となったノルマンディ上陸作戦。この最も長い一日を圧倒的な臨場感で描いたのが、「史上最大の作戦」である。
YouTube 予告編
死闘を前にして、アメリカ、イギリスを中心とした連合軍が実際に用意した兵力 は、15万6000人、上陸用舟艇は4000隻。一方、ドイツ軍は海岸に無数 の地雷を埋設して連合軍を迎え撃った。
この映画の辣腕プロデューサー、ダリル・F・ザナックは9ヶ月かけてノルマンディ地方31箇所でロケを敢行、大規模作戦を”再現”しようと投入された舟艇は約3万2000隻、出演者数はおよそ5万7000人。使用された砲弾は56万発、総制作費は1200万ドル(約43億円)だった。
劇中、ヴェルレーヌの詩が暗号に使われ、フランスのレジスタンスたちに動向を知らせる。全編の4分の1が戦闘シーンで、まさに”戦争”そのものが主役である。かくて戦闘の火蓋は切って落とされた。ユタ、オマハなど暗号名で名づけられた 5つの海岸で上陸は敢行された。
航空隊は夜明け前グライダーで音もなく沼沢地帯に降下する。同時に落下傘部隊も降下、激しい戦いが始まった。
「降下前11分だ もう一度 注意しておくーーー沼沢地帯はなるべく避けて降りろ。俺たちは泳ぎに来たんじゃないからな」
ヴァンダーヴーアト中佐(ジョン・ウエイン)が笑顔で部隊全員に注意する言葉だ。
ノルマンディ海岸地方の町、サント・メール・エグリーズに降下した部隊は悲惨だった。落下傘で降りる眼下の町は火災発生で真昼のように明るい。おまけに風で流され、ドイツ兵の待ち受けるど真ん中に降りてゆく。
ドイツ兵の機銃が火を噴き、絶好の標的にされる。落下傘が尖塔に引っかかり、着地できない兵士、近くで鐘が鳴り響いている。銃を出そうとして失敗、後はドイツ兵に狙われないように死んだフリをして眼下の銃撃戦を見守るだけ。
オルヌ川の橋梁爆破を阻止するイギリス軍コマンド部隊の激闘、海岸からの上陸部隊は何度も何度も崖を登りかけ、崖上から機銃で撃たれる。ようやく突破口を造り、進撃は開始されるのだ。
勇敢な兵たちの戦いぶり、累々たる屍、散乱した銃やヘルメットーーー。 「史上最大の作戦」は戦場の苛烈さを余すところなく描いた一大巨編である。
1962年 アメリカ・モノクロ 監督 ケン・アナキン 出演 ジョン・ウエイン ヘンリー・フォンダ クルト・ユルゲンスその他多数
* これは一度は見ておきたい作品と思う。
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