単なるアイドルスターを世界の名優に押し上げたドラマ。「太陽がいっぱい」は フランスの巨匠ルネ・クレマンが叩きだしたアラン・ドロンの出世作である。
「僕のマルジュ、愛してる。わかっているだろう・・・恋は盲目だ・・・」
友人フィリップの高価な服と靴をこっそりと身につけ、鏡に口づけして口真似をする青年トム(アラン・ドロン)。彼の心には裕福な家庭に育ったフィリップ(モーリス・ロネ)のすべてを奪いたいという欲望が芽生え始めてた。財産から婚約者のマルジェ(マリー・ラフォレ)まで。
映画は貧しい境遇の中で野心に燃える青年が完全犯罪を計画し、望むものを次ぎ次と手に入れて行く過程を克明に描いていく。このあたりの描写はドキュメンタリー「鉄路の闘い」でデビューしたルネ・クレマンの真骨頂だ。
青年トムは5000ドルの報酬で金持ちの道楽息子フィリップを連れ戻すためにナポリにやって来た。婚約者マルジュと暮らすフィリップはトムを小間使いのように扱い、帰る約束を果たさない。
殺意を抱いたトムは、フィリップを殺して海に捨て、パスポートを偽造して彼になりすまし、完全犯罪をもくろむ。穏やかだった海がフィリップを殺したあと、一転して荒れ狂う。まるでトムの内心を現すかのようだ。
マルジュに頬を寄せ囁くようにトムは言う。
「フィリップは愛していなかった。わかっているはずだ。彼は求婚したかい?」
フィリップを失って傷心のマルジュは、トムに不信感を抱いていたが、トムの甘く優しい言葉に心を許してしまう。マルジュ役のマリー・ラフォレは当時18歳、カンヌの新人コンクールでスカウトされ、この作品で映画デビューを果たした。
「太陽がいっぱいでね、それ以外はいい気分だ」
破滅が来るとも知らず、砂浜で太陽の陽光を浴びているトム。砂浜に整然と並ぶパラソルと青い海の対比が美しい。
ヌーヴェル・バーグの俊英アンリ・ドカエの斬新なカメラワーク、映画音楽の巨匠ニーノ・ロータのテーマ曲は大ヒット、その名を映画史に残した。
YouTube 予告編
1960年製作 フランス=イタリア カラー 監督 ルネ・クレマン 出演 アラン・ドロン マリーラフォレ モーリス・ロネ
* 「太陽がいっぱい」の撮影中、ドロンはロミー・シュナイダーと婚約していた。結婚にはいたらなかったが、売れっ子のロミーと駆け出しのドロンの恋は遠距離恋愛で撮影終了後、この作品のギャラはすべて彼女との電話代に消えたという。
0 件のコメント:
コメントを投稿